解説
どうして運動不足で胃が痛くなるの?
普段からエレベーターやエスカレーターばかり使っている人は、運動不足になっている可能性があります。実は運動不足は胃痛の原因になりうるのです。それはなぜ?その理由を見ていきましょう。
胃が痛くなる病気には、胃潰瘍や胃炎があります。さらに、病気ではないのですが胃酸が出すぎる胃酸過多、胃もたれなども人によっては「胃痛」と表現していることがあるのです。このように幅広い胃痛ですが、ストレスがその原因の1つ。運動によってストレスを発散することができますが、運動不足だとストレスが溜まり、そのために自律神経が誤作動を起こすことがあります。
自律神経の中でも、緊張しているときなどストレス状態で働く交感神経が活発になりすぎると、胃の血管が縮み、胃の血流が減少します。すると胃の表面を守る粘液の量が減り、胃炎や胃潰瘍になりやすくなります。反対に、リラックスしているときに働く副交感神経が活発になりすぎると、胃酸がたくさん作られて胃酸過多となり、これはこれで胃炎や胃潰瘍の原因になります。
つまり、胃は自身を攻撃する胃酸と、守る胃粘膜のバランスが崩れると病気になるのです。ですから、胃酸が出すぎても、胃粘膜が減ってしまっても胃の病気になる可能性があります。
さらに、運動不足によってお腹の内臓脂肪や皮下脂肪が増えると、胃が圧迫されて胃の動きが抑えられてしまいます。すると、胃もたれの症状も出やすくなります。また、食後にすぐ横になると胃酸を含んだ胃の内容物が食道に逆流して、逆流性食道炎の症状である胸やけも出やすくなります。

胃が痛い時の運動で気をつけること
ひどい胃痛の場合は、すでに胃潰瘍になっている可能性もあるので病院を受診したほうが良いでしょう。ただ、少し気になる程度であれば、日常的に身体を動かしてみましょう。
ただし、胃が悪いときの運動は注意点があります。食事をしたあとすぐに運動をすると筋肉に血流を届けるため胃の血流が減り、胃の動きが悪くなります。また、運動した後の水分補給に冷たい飲み物を飲んでしまうと、胃が冷えて血管が縮むため、この場合も胃の動きが悪くなってしまいます。
日ごろのストレス発散がうまくできていないときや、お腹周りが気になるようになってきたら、エレベーターやエスカレーターをちょっと我慢して、階段を使うようにしましょう。胃痛を予防するには、こうした簡単にできる運動もよいのです。

<参考文献>
■日本成人病予防協会
『ストレス解消法〜運動〜』
■やましたクリニック
『胃もたれ』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
エレベーターやエスカレーターを使わないようにしていない人は、年に1回以上、胃痛になりやすくなるリスクが2.0倍になります。
A: エレベーターやエスカレーターを使わないようにしていますか?
B: 年に1回以上、胃痛になりますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
31.7%
98人 |
68.3%
211人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
12.3%
38人 |
19.42%
60人 |
38.19%
118人 |
30.1%
93人 |
Z検定値 | 2.81 |
---|---|
オッズ比 | 2.0 |
信頼度 | 99.5% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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