解説
菌は悪者?
いまでは除菌や抗菌を売りにしたグッズがあふれています。「菌」と聞くと悪いもの、というイメージがあるかもしれませんが、実は私たちの生活は「菌」によって助けられている部分もあるのです。
もっとも身近な菌といえば、腸の中の善玉菌でしょう。もしこの善玉菌がいなくなってしまうと、お腹の調子が悪くなるだけでなく、メタボになりやすくなる、ビタミンを作り出せなくなる、精神的に不安定になるなど全身に悪影響を与え、体調を悪化させてしまいます。また、皮膚の表面にも常在菌と呼ばれる菌が存在し、外からの病原体の侵入を防いでくれています。
つまり私たちは「菌」によって守られ、健康でいられるのです。
除菌はアレルギーの原因になる
では、どうして除菌しすぎると花粉症になりやすいのでしょうか?
花粉症は季節性アレルギー性鼻炎ともいい、アレルギー症状の1つです。アレルギーとは体内の免疫が過剰に反応し、自分自身の身体に不都合を起こしてしまう症状です。
もともと、身体は病原体から身を守るために免疫という機能が備わっています。つまり、自分の体内にあるはずがないものが入ってくると、その物体の特徴をとらえ抗体という物質を作って退治します。
ですが、この抗体が出した物質で身体に困った反応が起きることがあります。鼻の粘膜が腫れると鼻づまりが起き、皮膚では赤みやかゆみといったじんましんが出たりします。これらの免疫反応は病原体と戦うという経験を繰り返して適切な反応ができるようになっていきます。ところが除菌ばかりをして身体が病原体と触れる機会を減らしてしまうと、経験値が少ない免疫反応は過度に反応してしまい、アレルギーを引き起こすのです。
赤ちゃんは何でも口に入れたり、なめたりしてしまうので、赤ちゃんの触るものはできるだけ除菌しているお母さんも増えています。しかし免疫を司る腸内細菌は3歳までに触れた菌によって決まるとも考えられています。さまざまな菌と触れることでたくさんの種類の腸内細菌を取り込み、多様性を持つことができると考えられています。偏った腸内細菌では免疫反応を制御できずアレルギーを引き起こしやすいと考えられています。
特に身体が弱っているときを除いて、普段から菌に接することは免疫機能を鍛えることになるのですね。赤ちゃんであっても過度の除菌には気をつけましょう。
<参考文献>
■アレルギー誌
『アトピー性皮膚疾患児に対するビフィズス菌末の投与が児の腸内細菌叢とアレルギー症状に与える影響の検討』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
除菌し過ぎないようにしていない人は、人よりも重度の花粉症になりやすくなるリスクが2.3倍になります。
A: 除菌し過ぎないようにしていますか?
B: 人よりも重度の花粉症ですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
67.3%
208人 |
32.7%
101人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
8.41%
26人 |
58.9%
182人 |
8.09%
25人 |
24.6%
76人 |
Z検定値 | 2.72 |
---|---|
オッズ比 | 2.3 |
信頼度 | 99.3% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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