解説
第7の栄養素、ファイトケミカルの実力とは?
近年、花粉症やアレルギー性鼻炎などのいわゆるアレルギー症状を持つ人が増えてきています。病院で治療することはもちろん大切ですが、普段の生活、特に食事でもアレルギー症状がケアできるとよいですよね。そこで、食卓に上がる機会の多いブロッコリーに注目してみましょう。
ブロッコリーやカリフラワー、キャベツ、青汁の材料にもなるケールなどの野菜は、どれも同じアブラナ科の仲間です。この仲間の野菜には、“スルフォラファン”という機能性成分が多く含まれています。スルフォラファンは「ファイトケミカル」ともいわれる第7の栄養素の一種。ファイトケミカルは、もともとは植物が紫外線や害虫から身を守るために作り出した物質といわれています。
ちなみに第7の栄養素とは、三大栄養素である炭水化物、たんぱく質、脂質、そして身体に必須のビタミン、ミネラル、食物繊維の後に続く栄養素のことを指し、その効果が期待されています。このファイトケミカルは抗酸化作用が非常に強く、活性酸素を除去し、身体の錆びつきを防止します。
身体の錆びつきを防止するということは、さまざまな病気の予防や老化の原因を取り除くことができるということ。抗酸化作用が強いスルフォラファンが含まれた食品をとることは、健康維持に非常に有効だといえそうです。
ブロッコリーと鼻づまりとの関係は?
では、ブロッコリーに含まれるスルフォラファンが鼻づまりとどう関係するのでしょうか?これは、鼻づまりの原因である花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)が大きく関わっています。スルフォラファンは、体内で花粉症などのアレルギー症状に関与する“IgE”という物質が作られすぎないように抑え、アレルギー症状を緩和することが期待できるという研究報告があるのです。花粉症やハウスダストなどによるアレルギー性鼻炎で悩んでいる人にとっては心強い味方ですね。
スルフォラファンの他の効果として、胃がんの原因であるピロリ菌を除去したり、内臓脂肪を抑制して肥満を予防したり、悪酔いの原因になるアセトアルデヒドの代謝を促進し二日酔いを軽減させるといった効果があります。また、ブロッコリーなど緑黄色野菜に豊富なβ-カロテンは、粘膜を保護したり身体を守ったりするための重要な栄養素でもあります。また、免疫の働きを整え、鼻の粘膜の保護などにも役立ちます。
スルフォラファンは、ブロッコリーの中ではスルフォラファンに変化する前の姿である「前駆体」として存在しています。この前駆体は、ブロッコリーの細胞が壊れることで、ブロッコリー中に含まれる酵素と反応し、スルフォラファンに変化するのです。つまり、ブロッコリーを噛んで食べることでスルフォラファンが作られるということですね。
しかし、前駆体と反応する酵素は、熱に弱いという性質があります。できるだけ生で食べることが一番ですが、ブロッコリーは一般的に茹でて食べるもの。そこで、できるだけ短時間で茹でるか、蒸して食べることをおすすめします。また、よく噛むことで反応しやすくなるので、コリッと少し歯ごたえがあるくらいの茹で加減でしっかりよく噛んで食べるように心がけましょう。
アレルギー性の疾患は、完全に抑えることは難しい病気です。ですが、アレルギーによい食品を意識してとることで、仕事や生活への影響を減らし、アレルギーの症状をコントロールすることもできます。食生活を意識することは、健康を維持するためにも重要なのですね。
<参考文献>
■文部科学省
『5.成果 第1章 機能性成分等新たな健康の維持増進に関わる成分の分析に対するニーズ調査』
■科研費2011年度 実績報告書
『スルフォラファンによるスギ花粉症の制御に関するトランスレーショナルリサーチ』
執筆 : 管理栄養士 高橋美枝
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
週に1回以上、ブロッコリーを食べていない人は、鼻がつまりやすくなるリスクが2.05倍になります。
A: 週に1回以上、ブロッコリーを食べていますか?
B: 鼻がつまりやすいですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
30.1%
93人 |
69.9%
216人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
10.36%
32人 |
19.74%
61人 |
36.25%
112人 |
33.66%
104人 |
Z検定値 | 2.82 |
---|---|
オッズ比 | 2.05 |
信頼度 | 99.5% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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