解説
もはやストレスは珍しくない
ストレスによるうつ病や自殺などが問題になり、平成27年から職場でもストレスチェック制度が始まりました。ストレスには自分で自覚できるものと、そうではないものがあります。ですから、ストレスチェックの結果を見て「意外なところにストレスを感じているなあ」と発見した人もいるかもしれませんね。
ある調査では、働く人の9割近くがストレスを感じていて、そのおよそ半分の人は毎日ストレスを感じているという結果になりました。つまり、ストレスを感じるということは特別なことではないのです。すると、中にはストレスを感じることに対して「みんなそうだから」とあきらめてしまっている人もいるかもしれません。しかしいくら一般的になってきたとしても、ストレスは身体に悪影響を与えるので、決して放置して良いものではないのです。
ストレスが原因となりうる病気
原因の1つにストレスが含まれる病気はたくさんあります。例えばうつ病や心不全、胃潰瘍や過敏性腸症候群、糖尿病や片頭痛、がんなどもストレスと関係しているといわれています。「病気の原因の9割はストレス」という医者もいるほどです。
では、なぜストレスは万病の元なのでしょうか?1つには、ストレスにさらされ続けてストレス耐性が減ってしまう心の病気があります。代表的なものにはうつ病やパニック障害、ストレスにより下痢や便秘を繰り返す過敏性腸症候群などがあります。
もう1つは交感神経の影響です。ストレスにさらされていると、身体はストレスに対抗するために交感神経を活発にします。交感神経は脈拍の速度と血圧を上げます。すると心臓や血管に負担がかかって動脈硬化が進み、脳こうそくや心筋こうそくの危険性が高まります。
また、交感神経が活発になると、血糖値を上げるためのホルモンを増やして、身体を活発に動かそうとしはじめます。その結果、強いストレスを感じている人は、糖尿病になる確率が1.4倍以上になったという報告があるのです。
さらに、ストレスで緊張した状態では胃や腸の動きが抑えられてしまうため、栄養バランスが崩れ、免疫を司る細胞の動きが悪くなってしまいます。すると、免疫力が低下してウイルスに感染しやすくなったり、体内でできたがん細胞を抑制できず、がんにかかりやすくなったりするのです。
自分に合ったストレス解消方法を
ストレスの解消方法は人それぞれですが、もし思いつかないときには精神科医がオススメする解消法を試してみてもよいでしょう。例えば、大きな声で歌う、身体を動かす、思いきり泣く、何かを壊す、掃除をする、ストレスの元を紙にひたすら書いて破る、といった方法があります。
まずは、休みをしっかりとって好きなストレス解消を試してみましょう。「休日だから何か活動しなきゃ」と慌てずに、ストレス解消に的を絞って身体を緊張から解放してあげましょう。
<参考文献>
■マクロミル
『〜ストレスチェック制度の施行にともなう〜働く男女1000人ストレス実態調査』
■農畜産業振興機構
『糖尿病とストレス』
■花王ヘルスケアナビ
『自律神経の基礎知識 【交感神経と副交感神経】』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
休憩や休日をしっかり取ってストレスを解消していない人は、ここ1年以内に、何かしらの重い病気を患いやすくなるリスクが3.54倍になります。
A: 休憩や休日をしっかり取ってストレスを解消していますか?
B: ここ1年以内に、何かしらの重い病気を患いましたか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
67.6%
219人 |
32.4%
105人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
2.16%
7人 |
65.43%
212人 |
3.4%
11人 |
29.01%
94人 |
Z検定値 | 2.68 |
---|---|
オッズ比 | 3.54 |
信頼度 | 99.2% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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