解説
引き算型のダイエットを行うと栄養不足になります。特に、身体を作る材料であるたんぱく質が不足すると、筋肉が減ってしまいます。
筋肉が減ってしまうと、二日酔いの程度にも影響してきます。アルコールは肝臓で分解され、アセトアルデヒド、酢酸と形を変えていきます。酢酸は筋肉で二酸化炭素と水に分解されますが、筋肉が少ないとこの過程にかかる時間が長くなり、酢酸が身体の中にたまってしまいます。これが二日酔いの深刻化につながるわけです。
また、引き算型ダイエットはビタミンやミネラルが不足しがち。代謝や身体の調節機能が悪くなった状態でお酒を飲むと、ビタミンやミネラルが身体から失われてバランスがさらに崩れ、二日酔いがよりひどくなります。
ダイエットの研究はたくさんありますが、「○○を食べるだけ」なんて健康な食生活を考えなくてもいい方法は見つかっていません。たとえば厚生労働省・農林水産省の「食事バランスガイド」を参考に、バランスの良い食生活と運動を取り入れましょう。
引き算型のダイエットの落とし穴
私たちの身体は、食べたもので作られ、そして動いています。生きていくのに必要な栄養素を大きく分けると、筋肉や血の材料になるたんぱく質、身体を動かすエネルギーになる糖質と脂質、そして、代謝や身体の機能を調節したり、骨などを形成するのに必要なビタミンとミネラルに分けられます。
健康な生活のためには、これらをバランスよく食べることが大切です。また、含まれている栄養素の割合は食品により大きく違いますので、身体が必要とする栄養素をまんべんなく取り入れるためには、たくさんの種類の食材を食べた方が良いとされています。
その一方、世の中に出回っているダイエット法の中には、食べる量を極端に減らしたり、特定の食品だけ食べなかったり、逆に特定の食品だけを食べるという、引き算型のダイエットがあります。リンゴばっかり食べるダイエットはさすがに古いですが、「1日1食、フルーツ味のドリンクを飲むだけ」なんていう広告を見たことがあるかも。そうした置き換え型のダイエット食品も、引き算型ダイエットのひとつなんです。
引き算型ダイエットでは、栄養不足からさまざまな不調をきたしたり、筋肉が減ってしまう危険があります。たとえば、極端に糖質を減らすダイエット。エネルギーがあまりに足りなくなると、身体は筋肉を壊してエネルギー源に回してしまいます。体重の数字は減りますが、減ったのは筋肉で脂肪は期待するほど減ってない…なんてことも起きやすいのです。
野菜や果物のみを食べるダイエットは、一見すると健康に良さそうですが、糖質とたんぱく質が両方とも不足してしまうことも。そのため貧血を起こしたり、疲れやすくなったりします。また、たんぱく質が足りなければ、筋肉が傷ついたときに補修することもできません。
そして、ダイエットでは避けられがちな肉や魚に多く含まれているビタミンやミネラルもあり、引き算型のダイエットではこれらが不足します。
ビタミンが不足し、ミネラルのバランスが崩れ、筋肉が減ってエネルギー源が枯渇した身体はとても弱いものです。そんなときに、アルコールが入ってきたらどうなるでしょう?
アルコールの分解と二日酔い
二日酔いになってしまうメカニズムの中で、引き算型のダイエットの結果と関係が強いと考えられるのが、ミネラルバランスの乱れとビタミン不足、酸とアルカリのバランスの乱れです。
まず、ミネラルバランスの乱れです。アルコールには利尿作用がありますので、身体の中の水分を尿として、どんどん排出してしまいます。そのときにカルシウムやカリウムなどのミネラルも排出されてしまうんですね。そして、脱水やミネラルバランスの乱れにつながります。
アルコールそのものにも、いくつかの種類のミネラルやビタミンの吸収を悪くする作用もあるため、ビタミン、ミネラルの不足はさらに大きくなってしまいます。このように、ビタミンやミネラルが不足すると、身体の中の調節がうまくできなくなります。たとえば、足がつりやすくなるといった身体の不調も、ビタミンやミネラルの不足によるものです。
そして、二日酔い防止に大切なビタミンB1の不足も起きやすくなります。体内に吸収されたアルコールは、肝臓で毒性のある“アセトアルデヒド”を経て、酢酸という物質に分解されます。このとき、たくさんのビタミンB1を使います。
豚肉や玄米、大豆にはビタミンB1が多く含まれています。「太るからお肉は食べない」なんて引き算型のダイエットをしていると、アルコールの分解で消費する前からビタミンB1が不足しているかもしれません。ビタミンB1が不足すると、疲労感や筋肉の痛みなどの不調が起こります。
筋肉と二日酔いはあまり関係なさそうと思われるかもしれませんが、実は大いに関係あり。アルコールの分解の途中でできた酢酸は、血液の流れに乗って身体中に届けられます。この酢酸を筋肉がエネルギー源として利用し、二酸化炭素と水に分解します。引き算型のダイエットで筋肉量が減ってしまっていると、このプロセスに時間がかかってしまいます。
筋肉の量が減って酢酸の分解に時間がかかると、酸とアルカリのバランスの乱れが長く続くことに。酢酸は、アルコールやアセトアルデヒドと比べると害が少ないですが、酸性の物質。つまり、身体全体がほんの少しだけ酸性に傾くことになります。これが二日酔いの重症度と関係するといわれているんです。
また、お酒を飲むと食後に血糖値が急に上がり、また下がるといわれてています。二日酔いの症状のひとつにこの低血糖による頭痛などが含まれます。こうした血糖値の乱高下(血糖値スパイク、またはグルコーススパイク)は二日酔いだけでなく、糖尿病にもつながるやっかいな症状なんですね。
もともと、引き算型ダイエットはカロリーだけを減らす方法が多く、健康でメリハリのある身体を作るダイエット方法ではないといわれています。その影響は、まるでドミノ倒しみたいに二日酔いの症状にまで影響するんですね。やっぱり、バランスのいい食生活と運動、これがダイエットにはいちばんです。
<参考文献>
■厚生労働省 e-ヘルスネット
『二日酔いのメカニズム』
■独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター
『正しいお酒との付き合い方 冊子1』
■厚生労働省
『「食事バランスガイド」について』
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
引き算型のダイエットを行っている人は、お酒を飲む量が多くなくても、二日酔いになりやすくなるリスクが3.42倍になります。
A: 食品の摂取を減らし、特定の食品の摂取だけを増やす引き算型のダイエットを行わないようにしていますか?
B: お酒を飲む量が多くなくても、二日酔いになりやすいですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
65.0%
201人 |
35.0%
108人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
4.53%
14人 |
60.52%
187人 |
7.12%
22人 |
27.83%
86人 |
Z検定値 | 3.5 |
---|---|
オッズ比 | 3.42 |
信頼度 | 99.9% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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