解説
肩こりの根本的な原因
「肩がこったなぁ」と思うと多くの人が肩をたたいたり、揉んだりしています。たしかに一時的には少し症状が改善したように思えますが、それだけで「治った」と思うことはほとんどありません。それは、たたいたり揉んだりすることが単なる一時しのぎにすぎないからです。同じように、ストレッチやマッサージも一時的には効果がありますが、根本的な原因の改善にはならないのです。
また、マッサージを受ける際にも注意が必要です。首は狭いところに大切な血管や神経が集中しているため、無理に首を揉んで違うところで痛みを感じたという問題もあるといいます。揉んでもらう場合には肩だけにとどめ、首は控えましょう。
肩こりの根本的な原因は筋肉の衰えです。肩や首は頭を支え、そしてぶら下がった腕や手を保持しています。しかし、これらに関係した筋肉が衰えると姿勢がゆがみ、それによって血流が悪くなります。すると、筋肉に酸素や栄養が届きにくくなりますし、筋肉で生じた老廃物も取り除かれにくくなります。
特に日本人の場合は、欧米人と比べると骨格的に肩こりになりやすいという特徴があります。それは、背中のカーブの違いです。背骨はまっすぐではなく、横から見るとS字のようにカーブしています。このカーブによって頭の重みを分散しています。ところが、日本人のカーブの度合いは欧米人に比べて小さいため、背骨だけで負担を分散できず、どうしても筋肉にも負荷がかかってしまうのです。

まずは簡単に鍛えられる僧帽筋から
肩こりの症状があらわれるということは、肩周りの筋肉に負荷がかかっているということです。ですから、肩周りの筋肉を鍛えることが根本的な改善につながります。特に効果的なのは、“僧帽筋(そうぼうきん)”と呼ばれる首から背中にある大きな筋肉を鍛えることです。
僧帽筋は背中側にある大きな筋肉で、左右対称になっています。背骨のところでは首から胸の下まで骨とつながっていて、その筋肉がさらに外側で肩の骨につながっています。この僧帽筋が衰えると頭の重みで姿勢が前かがみになり、肩周りの血流が滞り、老廃物が溜まりやすくなってしまいます。ですから、この筋肉を鍛えることが肩こり改善への早道なのです。
では、自宅や移動時間などに、簡単に僧帽筋を鍛えることができる筋トレを1つ紹介しましょう。まずはかかとから頭までまっすぐになっていることを意識して立ちます。そして、両手を前に下ろし、両手でカバンの取っ手を持ちます。そのまま両手はまっすぐ下ろして、肩をすくめるようにしてカバンを持ち上げます。このとき肘が曲がらないように気をつけましょう。カバンは体の前面を5〜10センチほど滑らせるようなイメージです。そしてゆっくり下ろし、最初の格好に戻ります。たったこれだけなので、人前でもできそうですね。10回ぐらいを朝夕行うだけでも効果的ですし、カバンの重さで負荷を調整できます。
肩がこるなぁと思ったら、筋トレで根本から改善。今日からでも始めてみましょう。

<参考文献>
■ハリックス ほぐリラ
『肩こりには筋トレが効くってホント?プロに教わる肩こり解消“筋トレ術”』
■林浩一郎著 全日本病院出版会
『肩こり、首・腰の痛みを自分で治す・予防する』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
週に3回以上、筋力トレーニングを行っていない人は、人よりも肩がこりやすくなるリスクが2.12倍になります。
A: 週に3回以上、筋力トレーニングを行っていますか?
B: 人よりも肩がこりやすいですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
9.5%
57人 |
90.5%
540人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
3.85%
23人 |
5.7%
34人 |
53.27%
318人 |
37.19%
222人 |
Z検定値 | 2.69 |
---|---|
オッズ比 | 2.12 |
信頼度 | 99.2% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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