解説
怒りは生きるために必要な感情
怒りという感情はどのように表れて、身体にどんな影響を与えるのでしょうか。怒りが発生するのは大脳です。大脳のうち、他の哺乳類・爬虫類でも持っている原始的な部分は“大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)”と呼ばれ、怒りはこの部分で発生します。つまり、怒りというのは人間だけでなく多くの動物が持っている感情ということになります。
これは、例えば敵と出会ったときに「戦うか、逃げるか」という判断を素早く行うために備わったしくみのひとつです。つまり、怒りの感情は誰でも持っていて、生きていくために必要な感情なのです。
怒りが身体に与える影響
では、怒りを感じると身体にはどんな影響が表れるのでしょうか。怒りの感情が生まれると、身体からはアドレナリンというホルモンがたくさん放出されます。アドレナリンは自律神経のうち、交感神経を活発にするホルモン。実際に怒ると交感神経が活発になり、目を見開いて脈が速くなり、全身に多くの血流を届け、呼吸が速くなって筋肉が緊張します。いつでも戦える状態に身体を整えるためです。
しかし、この状態はリラックスしているときとは正反対。緊張してとても疲れが溜まります。このため、あまり怒っていると疲れやすくなってしまうのです。そこで、身体には怒りを鎮める働きも備わっています。これに関わるのが、脳で情報を伝える働きをするセロトニンやオキシトシンという物質です。この2つの物質の量が多いと、幸福感が増えて怒りが表れにくくなります。
さらに、セロトニンには自律神経を整える効果もあるので、怒りでアンバランスになった自律神経を早く元に戻してくれるのです。怒りっぽいな、と感じたらこの2つの物質が少ないのかもしれません。まずは規則正しい生活をして、セロトニンを増やすといわれているたんぱく質に含まれる成分“トリプトファン”を摂取するように心がけてみましょう。また、笑いには自律神経を整え、リラックスする効果があります。怒りの感情による疲れをほぐすためにも、意識してコメディを見るなど積極的に笑いを生活に取り入れてみましょう。
病気が隠れている場合も
なかには怒りっぽくなり疲れやすくなる病気もあります。そのひとつが貧血です。女性は月経と鉄分の摂取不足のため、貧血になりやすい傾向があります。経血の量が多いようであれば婦人科や産婦人科を、貧血の検査のためには内科を受診しましょう。また、甲状腺ホルモンが増えてしまう病気や、更年期障害でも同じような症状が表れることがあります。イライラが収まらないなど体調で気になることがあれば、病院を受診して相談してみましょう。
<参考文献>
■日経Gooday
『「怒り」との上手な付き合い方』
■日本クリティカルケア看護学会誌
『クリティカルケア看護師に必要な“笑い”の力』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
怒りっぽい性格の人は、人よりも疲れが取れにくくなるリスクが1.66倍になります。
A: 自分はあまり怒りっぽくない性格だと思いますか?
B: 人よりも疲れが取れにくいほうですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
42.1%
296人 |
57.9%
407人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
18.78%
132人 |
23.33%
164人 |
33.14%
233人 |
24.75%
174人 |
Z検定値 | 3.32 |
---|---|
オッズ比 | 1.66 |
信頼度 | 99.9% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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