解説
思ったよりも怖い歯周病
歯周病は歯みがきのときに歯肉から出血したり、口臭の原因になったりする病気です。その原因は、口の中にいる細菌である歯周病菌です。歯周病は、歯と歯ぐきの境目にこの歯周病菌が増えて炎症を起こすことで発症します。
この歯周病菌は、歯みがきだけでは完全に取り除くことはできません。ですが、細菌のかたまりである“歯垢(しこう)”ができないように歯みがきをしていれば、進行して歯周病にならないように予防できます。ところが、よく噛まなくても食べられる柔らかい食事が増えたことや、甘いお菓子、ジュースを口にする機会が増えたことなどにより、日本人の実に8割が歯周病になっているという報告があるのです。しかも5歳から14歳で、すでに3人に1人が歯周病になってしまったといいます。
歯周病は口の中だけに症状が起きる病気と思われがちですが、実はそうではありません。最近では、歯周病と糖尿病との関連に関心が高まっています。歯周病の人は糖尿病になりやすく、糖尿病の人は歯周病になりやすい関係にあります。それだけでなく、歯周病があると肺炎になりやすかったり、歯周病菌が血管の中をつたって心臓に届き、病気の原因になったりすることもあります。
麹菌が歯周病を防いでくれる
歯周病を防ぐために、日頃からできることはないのでしょうか。実は歯周病の予防が期待できる食品があるのです。それは「味噌」。味噌の原料は大豆で、これを麹で発酵させたのが味噌です。味噌にはタンパク質やビタミンB12、ビタミンE、イソフラボンやレシチンなど大豆の栄養が丸ごと含まれていますが、歯周病との関係で注目したいのは麹菌のほうです。
歯周病の主な原因菌は、“ジンジパイン”という毒素を作って炎症を引き起こします。ところが、麹菌はこの毒素の作用を阻害することが分かったのです。つまり、味噌は歯周病を防ぐことができるというわけです。
和食に欠かせない汁物といえば、味噌汁。味噌汁の具として、野菜やキノコなど歯ごたえのある食材を選んで入れれば、噛む回数も増えるため歯垢の付着も予防できます。歯周病予防のために、もう一度、味噌汁を見直して毎日の生活に取り入れてみませんか。
<参考文献>
■8020推進財団
『歯は全身の健康の原点』
■広島大学
『歯周病菌の病原性を不活化する麹菌由来物質の構造と機能』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
月に1回以上、味噌汁を飲んでいない人は、歯周病になりやすくなるリスクが3.55倍になります。
A: 月に1回以上、味噌汁を飲んでいますか?
B: 歯周病ですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
90.0%
278人 |
10.0%
31人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
13.59%
42人 |
76.38%
236人 |
3.88%
12人 |
6.15%
19人 |
Z検定値 | 3.28 |
---|---|
オッズ比 | 3.55 |
信頼度 | 99.8% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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