解説
歯茎の出血の原因は歯周病かも
歯茎からの出血にはいくつかの原因がありますが、もっとも可能性が高いのは歯周病です。歯周病とは、歯と歯ぐきの境目に細菌が繁殖して炎症を起こし、ひどくなると歯茎が腫れたり赤くなったりする病気です。
歯磨きで口の中をどれだけきれいにしても、歯周病の原因となる細菌を完全に取り去ることはできません。人間の口の中には300種類以上の細菌が存在していますが、普段はそれほど害を与えるわけではありません。しかし、歯磨きを怠ったり、糖分の多い食事をたびたびしていたりすると、細菌によって粘りのある成分が作られて、“歯垢(しこう)”となって歯にくっつきます。この歯垢は、一度できてしまうとなかなか取れないのです。
たった1ミリグラムの歯垢の中に、細菌は10億個も含まれているといわれます。この細菌によって歯ぐきに炎症が起き、やがては歯周病になってしまいます。歯周病を放置すると、炎症が進んで歯を支える骨にも影響を及ぼします。歯周病が悪化すれば、最終的には歯が抜けてしまいます。
コンビニの食べ物の影響
では、なぜコンビニで食べ物を買う人は歯周病になりやすいのでしょうか。コンビニ弁当やコンビニフードとも呼ばれるドーナツやフライドチキンなどのスナック、軽食などの食べ物には、「食べやすい」「高カロリーのわりに栄養がかたよっている」という特徴があります。
食べやすい、というのは柔らかくてあまり噛まなくてもよいということです。硬く歯ごたえのある食べ物は歯にくっつく歯垢を取り除く効果があります。ですが、コンビニに置いてあるあまり噛まずに食べられる食品は、歯垢を掃除することはできません。それだけでなく、甘い食べ物や飲み物は歯垢を増やしてしまいます。
また、高カロリーのコンビニフードは脂質と糖質は多いですが、身体の調子を整えるビタミン、ミネラルなどはあまり含まれていません。野菜や果物に多く、炎症を抑える働きを持つビタミンCや、ゴマやナッツに多く炎症や細胞の酸化を抑えてくれるビタミンEなどは、コンビニフードからは取りにくいのです。
さらに、脂質や糖質を取りすぎると、血糖値をうまくコントロールできなくなります。したがって、もし糖尿病を患っていれば、脂質・糖質過多なコンビニフードで病状が悪化してしまうという懸念もあります。また、糖尿病の患者のように血液中の糖分が多いと、歯周病菌の栄養となってしまいます。その一方で、歯周病菌が作り出した毒素が腫れた歯ぐきから血液に入ると、血糖値を調整するホルモンの働きが悪くなってしまいます。このように、糖尿病と歯周病は、糖尿病の人には歯周病が多く、歯周病があると糖尿病が悪化しやすいという相互に悪影響を及ぼし合う関係にあります。そのため、歯周病は糖尿病の「第6の合併症」ともいわれています。
コンビニで食べ物を買う機会が多いと、何かと口に食べ物を入れている時間も長くなりがちです。歯周病など口の中のトラブルを予防するために必要なのは、歯磨きなどのケアだけではありません。何かをつまんでいる時間を減らして、口の中で細菌が活動しやすくなる時間を短くすることも大切なのです。
歯茎から出血しやすい人は、一度歯科にかかって歯周病になっていないか見てもらうとよいでしょう。歯周病になっている場合は、脂質や糖質が多く、添加物も入ったコンビニフードを避け、できるだけ自炊して野菜など歯ごたえのしっかりした食事を作る、甘いものの取りすぎを避けるといった食生活の改善が必要です。そして、毎食後にしっかり歯磨きをするようにしましょう。
<参考文献>
■日本臨床歯周病学会
『歯周病とは?』
■日本臨床歯周病学会
『歯周病が全身に及ぼす影響』
■ライオン歯科衛生研究所
『歯周病』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
コンビニで食べ物を買わないようにしていない人は、歯茎から出血しやすくなるリスクが2.28倍になります。
A: コンビニで食べ物を買わないようにしていますか?
B: 歯茎から出血しやすいですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
25.9%
80人 |
74.1%
229人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
4.85%
15人 |
21.04%
65人 |
25.57%
79人 |
48.54%
150人 |
Z検定値 | 2.64 |
---|---|
オッズ比 | 2.28 |
信頼度 | 99.1% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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